前回は美食編ということで、名古屋旅行で訪れたお店を紹介しましたが、今回は名所編になります。巡った観光地で気に入った場所について書いていきたいのですが、ただ、これを一気にまとめるとなかなか文量的に重たくなりそうな気配があるため、何回かに分けていこうかと思います。

ということで、今回紹介したいのは「名古屋市市政資料館」です。ここはかなり有名なスポットで、名古屋市内を走る周遊バスでも必ず停まる場所のひとつではあるのですが、実際に寄ってみると名古屋らしさが濃厚に詰まっていました。

この建物、もともとは名古屋控訴院、つまりは裁判所でした。大正11年にネオ・バロック様式で建築され、1970年代までは実際に使われていたそうです。その後、国の重要文化財に指定され、現在は資料館となっています。

一見しただけでも相当立派な建物です。周りにいた観光客も感嘆の声をあげていました。この日は雨まじりの陰鬱な天気だったのですが、かえってそれがこの建物の重厚さを引き出して、ヨーロッパのどこかにでも飛ばされたかのようなトリップ感がありました。

太っ腹なことに見学は無料です。ということで遠慮なくズイズイと入っていくと、これまたいきなり立派なエントランス。立派すぎて思わず笑ってしまいました。

中央階段室は19世紀ネオ・バロック様式で重厚に彩られ、階段を上り切った正面には、罪と罰を釣り合わせる意味合いを持つ「天秤」の描かれたステンドガラスがあります。

天井アーチの一部が吹き抜けとなっており、そこにもステンドガラスが嵌められ、自然光が入り込むようになっていますね。今の時代にこれを公共空間で作ろうとなった際、許可が降りるものでしょうか。その時代なりの粋というか、建設当時の人たちの理想と許容性に思いを馳せたくなります。

廊下も長くて立派ですが、もともとは裁判所ですから、そこはかとない厳しさがいまだに残留しているように感じられます。

廊下の窓からは中庭も見下ろせますが、そこから切り取れる風景は、「こないだちょっとベルリンに行ってきたよ」などといって十分騙せそうな。

やはり曇天と似合います。

元裁判所なので、実際に使われていた勾留室も見学できます。

勾留室の中を覗けば、ネオ・バロックの荘厳さから、一気に現代的なミニマリズムの極地へと移り変わります。これまた美しいと思ってしまいました。

元裁判所ですので、実際に使われていた法廷も見学できます。


当時の法廷内の様子をマネキンで再現してあり、雰囲気が伝わります。ベンチも用意してあるので、法廷を眺めながら贅沢な休憩がとれます。脳内裁判でもやってみるのはいかがでしょう。

見学可能な法廷室がいくつかあるのですが、なぜかそのひとつが喫茶室になっています。色々眺めて小腹も減ったし、入ってみることに。店内にはまさに喫茶店のマスターという感じの方がいらっしゃいました。どうやらここはミックスサンドが名物らしいのですが、お昼をだいぶ過ぎていたせいもあるのか、材料がなくて作れないということでした。

ミックスサンドなんてどこでも食べれるので(失礼)、あんトーストとホットコーヒーを注文。改めてですけど、トーストにバターを塗りあんこを重ねて、ここまで味わいの調和が図れるのがすごいなと。あんこはトーストに塗るために生まれたものではないのですからね。当たり前のことを言っていますが。

名古屋滞在中、コーヒーを飲む機会が普段よりも多かったのですが、いま思い出しても、ここのコーヒーがいちばん美味しかったと感じます。コーヒーは世の中に飽和するほどあるのに、自分にとって美味しいコーヒーは直感的にすぐ分かり、後になっても余韻が残り続ける。不思議なものです。

堪能して外に出ると、猫が雨宿りしてました。バロック建築に棲みつくなんて実に贅沢な猫ですこと。