コンチネンタル彼岸

意識の別荘

洋楽における「サムライ」の解釈について②

 

・前回の記事。想定してたよりPVもいい感じで読者数も増えた。皆様に感謝。

star-watch0705.hateblo.jp

 

・ということで、この企画も2回目。今回取り上げるのはあの有名曲。

youtu.be

・懐い。お世話になった人も多いだろう。ダンスダンスレボリューション、略してDDRといえばこの曲というくらい人気があった。もはや前世紀末の話だ。ちなみに筆者はDDRがゲーセンに現れた当初、気後れしてできなかったが、高校生になったら精神の箍が外れて半分気が狂ったので難なく踊れるようになった。

 

・それはいいとして、飲みやすい炭酸飲料みたいなこの曲の一体どこに、「サムライ」とかいう血の気を感じさせる要素があるというのかというと、フレーズである。この曲の歌詞から想起されるイメージが、私の「サムライ」を探しに日本まではるばる行ったよ、みたいなノリなのだ。ということで、この曲の歌詞から「サムライ」という単語のある文節を抜き出してみた。以下が拙訳である。

あーいあいあい、あーいあいあい、あーいあいあい、あたしのサムライはどこにいますか。

見つけたいだけ、あたしだけのサムライを。強くて、でもちょっとだけシャイな。必要なんです。あたしの、あたしだけのサムライ

 

・特に「あたしのサムライはどこにいますか」がサビ部分で繰り返されるため、ここに曲の心願、フィーリングが込められていると思われる。また、それ以外での、“Someone who won't regret" “To keep me in this net"といった歌詞、曲中盤から後半で繰り返される、“I'm your little butterfly“という、タイトル名の込められたフレーズ。

 

・これらの印象から推論すると、この曲における「サムライ」とは、鎧を着込んで刀を下げた武者のことではないことなど誰でもわかる。では、この曲における「サムライ」とは何を指すのか。至極単純に表現すれば「日本人男性」であろうし、その中でも「強くて、でもちょっとだけシャイな」ということになり、ボーイハント的な性衝動を歌っているのは間違いない。

 

・しかし、私としては「強くて、でもちょっとだけシャイな」の部分に、ある種のステレオタイプを感じる。そもそも曲のテーマ性である、「自分に都合の良さそうな男」を探しに日本へ向かうという、その行動自体にステレオタイプ的な原理が働いている印象だ。母国には自分の思い通りになる男がいないから日本を目指す。「(おとなしそうで)あたしの思い通りになるサムライがきっといる」という期待感。そんなステレオタイプがポップな衝動性の中でハジけている。

 

・しかし、軽薄に思えて、実は「サムライ」の本質を突いてもいる。サムライとは、主従関係の中でしかサムライ足り得ないことを知った上でのボーイハントとも捉えられるからだ。また、この感覚は前回の記事でも予感した、西洋における「騎士(ナイト)=サムライ」の図式にも再接近するもので、興味深い。

 

・自分のナイトが母国で見つからなければ、日本のサムライを従わせればいい、というような感覚。日本文化の評価がますます高まる中、欧米との鏡合わせでありつつ、完全な異世界とも認識されるからこそ、日本では自分の願望が叶えられると期待する人々が今後増えていくのだとすれば、この曲は20年以上前の曲でありながら端緒を示していたのだろうか。なんてまとめたくなるが、たぶん本人たちそこまで考えてないと思う。

 

・ちなみにこの曲のPVに映るのはSmileの初期メンバー、ヴェロニカとニーナの2人なのだが、筆者にはどっちかヴェロニカでどっちがニーナなのかいまだによくわからない。ちなみにヴェロニカは2004年に出産、ニーナは2000年頃にソロデビューのため脱退したが、そのあとどうなったかは調べてもなんかあんまりよくわからなかった。

 

Butterfly